惚気られて喜ぶ日光♂について考えていて思ったんですが、本来の日光にとっての至上の幸福って「愛する人たちが日光のことをとても誇りに思ってくれている」状態なんじゃないですかね。自分は身内にとって自慢の息子・娘/部下/兄・姉貴分/連れ合いetc.である、ということに喜びを感じてそうな気がする。
「誇り」「自慢」ってことは、二人の関係の外にいるひとたちの評価を意識しているはずで、だから女の日光はなんか大変そうなんだと思う。「社会通念上の理想の伴侶」像に男の日光はもともとわりと近いが、女の日光はそうではない。自分でも、自分は少々ストロングスタイルすぎて、いわゆる「理想の女性」にはなれない、と認識しているでしょう(ならなくてもそのままでいいよと私は言いたいが、日光一文字は規範意識が強い)。まあもちろん、都市国家スパルタパロディ、等の特殊な環境であれば、日光♀が理想の女性で通る場合もあるかもしれないけど……
もちろん連れ合い個人の見解としては、日光♀のことをカワイイ自慢の妻だと思っているかもしれない。でもそれを明言したところで、先方の両親・友達・同僚・上司等々全員が「そうでしょうとも」と口をそろえるかは非常にあやしい……というふうに日光が判断していたらまずいわけですよ。日光、自分のせいで連れ合いに恥をかかせるのはかなりイヤがりそうなんだよね。自分の大事な人が自分をかばった結果、「まあお前が思うならお前の中ではそうなんだろうな……」なり「目を覚ませよ!!」なり、周囲に眉をひそめられ孤立する、というのはものすごくイヤがると思う。
まずいのは、そうはいっても恋人本人が満足していて「みんながあの女はよせよって言ってても構わない、俺はお前のこと好きだし自慢だと思っているよ」って言ってればそれでいいというのに、当の日光♀本人が、それを雑に流して「貴方は今ちょっと気が狂っているからそういうでしょうが、周りの人がそういうのももっともです」ってなぜか説教してくるってところですよ。
なんなら、みんなは別によせよなんて言ってないかもしれない。実際の相手方は全然悪気がなくても、彼氏の友達が「マジで? 大丈夫? 尻に敷かれてるんじゃないの?」とめっちゃ心配しているらしい、とか、現パロで彼のお母さまが「娘と一緒にお買い物して服を買ってあげるのが夢だったの!」といって、彼女さんに早く会わせろと息子をせっついているらしい……とかでも日光は危機感を抱いて、もっと女らしい相手の方がいいのでは??と思い始める。
面倒くさいのは、日光は多分、相手のこと好きだし、「もし皆が反対しても好きだよ」を、相手の愛情の発露として理解しているし嬉しく思ってもいると思うんですよ。けど、それはそれとして、ふさわしくない連れ合いとくっつこうとしている、というのは自分の連れ合いにとって非常に不名誉な状態ではあるから、口を出さずにいられないんでしょうね。
恋人にしたら日光はどう考えても自分のことが好きなのに何でか別れを告げてきて、好きだからそんなのイヤってかきくどいたら微妙に嬉しそうにするが、すぐに冷静な顔になって「目を覚ましてください」とか冷静に言ってくる。なんだこいつってなるでしょうね。
あのひとの面倒くささって普通の「女としての自分に自信がない」というのとはまたなんか違うと思うんですよね。あれは主にモテの文脈のコンプレックスというか「女(恋愛対象としての)として自分はダメダメ」と思っていた人が、優れた相手に愛されることで大丈夫になる、とかの話が多いじゃないですか。あるいは女性らしい格好を「ちゃんと」する、ことで自分で自分を認められるようになる、とかもあるのかな。
日光は、「あり方が女性のステロタイプに反してストロングスタイル過ぎて全般的に警戒される」「だが自分は今の自分を気に入っているし、変えられない」「自分はともかく、愛する周囲が自分のこのスタイルのせいで迷惑を被るのは申し訳ない」という話なので、恋愛ごときでどうにかできる問題ではないと思う。
というか、そもそも恋愛がらみのコンプレックスがあるかもあやしい。
第一にあのひと、自己肯定感はわりと高いと思う。「世間のいう理想の女性像と俺は激しく乖離しているが、それはそれとして己は戦士/人間としてはなかなか悪くないし、世間に合わせて自分を変えたいなどとは全く思わない。」って感じでしょう。複雑な思いがあるとすれば「仮に俺が男に生まれていれば誰もが認める益荒男だっただろうに!!」くらいじゃないか。それでもまあ日光♀には他の道はないので「男をあげろ!!」って自分に発破をかけて頑張っていく。周りから見て自分が優れていない、と思っていても自己肯定できるわけで、正しい意味で自己肯定感の塊なのかもしれない……
日光♀、受け入れてもらえない自分を反省してステロタイプに寄せてみる、ってことは良くも悪くもあんまりしない気がするんですよね。単純にそれをやる器用さがないし、おそらく日光自身は自分のことを誇りに思っているから、へんに変えたくないんだと思う。山鳥毛が左腕と認めてくれた自分だし。歯を食いしばって立ち去って、そのまま日光をやっていくんだろう。そういうところ本当に好きだよ……。
第二に、女日光、多分だけど女からハチャメチャにモテると思うので、自分は好意を寄せられる価値のない存在、みたいな濁りはないと思う。そこらの男よりも背が高くて凛々しい顔立ちで声も良く、おまけに意志と信念のある女、下手したら男の日光よりも露骨に女性からキャーキャー言われている可能性がある。痴漢から助けたよその審神者♀に恋文同然の手紙をもらう、とか、たいして話したことのない後輩♀たちから大量のバレンタインチョコを貰う、などの経験が普通にあっておかしくない。
まあ、男にモテはしない(むしろライバル意識を燃やされているかもしれない……)から、自分は男には好かれないらしい、と認識しているかもしれないが。でもあのひと、異性全般に好かれない・優しくされない程度で弱るタマではないと思うんですよね。めっちゃ好きな人が可憐そのもののお嬢さんといちゃついてるのを目撃して動転、とかはあるかもしれないけど(でも正直、気の強そうな女が相手よりも、可憐な女性相手の方がきっぱり諦めがつくから、自分がああであればとかあんまり思わない気がする)。
なんにしても、他人に好意を寄せられてるけど、女としての自分に自信がないから全然信じられない……とかいうことにはならない機がする。あのひと素直だから、好きな相手に好かれたら普通に舞い上がるだろうし、蛙化現象とかもまず起こさないんじゃないか。そんなに好きじゃない相手でも、不誠実なことはしないと思う。普通にきっぱり振るなり適宜検討するなりするだろう。先方がメチャ年下とかだと、あんまり真剣に受け止めない可能性はあるが、それは別に自分に自信がないからではない。
ひとりの相手からベロベロに溺愛されたら解消するパターンよりよほどめんどくさい。とくに相手が「当事者二人が愛し合ってればいいのに、いったい何を言っているのか理解できない」派だった場合は非常に揉めると思う。日光は自分を相手の番として社会的にみてふさわしい感じに変えることはできないし、したくないし、しない。だからふさわしくないので別れなくてはいけない……という日光個人の独り相撲がめくるめく展開しているんだけど、結論だけきっぱり既定事項かのように出力するので、相手からしたらすごく混乱すると思う。
男でミラーリングするなら、「やめとけって、あんた良い女だから、幸せにしてくれる奴が絶対いるよ。オレみたいな駄目な奴のことは忘れちまいな」ときっぱり振ってくるまだ売れていないバンドマン、みたいなもんですかね。普通に働いて奥さんと子どもを養う「ちゃんとした男/夫」にはとてもなれない、とわかっているから最初からそう言ってくる。世間の基準でいう良い伴侶像と乖離しているが、それを埋めるために変わることはできないし、したくもないから、相手を傷つけないために離れていく……。
一方的な事情で拒否するなんて身勝手っていう意見もあるかもしれませんけど、でも言うてたかが恋愛感情ですからね。こっちはこんなに好きなんだから相手は生き方を変えるべき、っていうのはだいぶ傲慢ではある。ただ日光の場合は、別に全部杞憂かも知れないし、杞憂なら日光個人は全然別れたくない、って言うのが問題。
あのひとやっぱり保守的なので「夫婦として幸せな家庭を築くとなれば、二人の愛情の結びつき以上に、周りに認められ祝福されることが必須である」という価値観の影響を強く受けているんだと思う。幸せになってほしいと願われるくらい好きな相手とは、もし相手の周囲に祝われそうもないなら、断固として一緒になりたくないと言うんじゃないか。相手に対して過保護なのかもしれない。自分のせいで相手が傷つくのがイヤ……わけわからん理由で振られた方がよほど相手は傷つくのでは、については甘く見ているというか、別の良い相手が見つかれば大丈夫、と無邪気に思ってそう。
愛し合っていても孤立してしまえば幸せではない、は、ある程度事実だと私なんかは思いますけど、日光は完璧主義すぎるんじゃないかと思う。別に実際には、「最初は反対していたお姑さんが、そのうちに日光の真面目さを気に入る」とかいう事態も全然起きえますよ。でも日光、あまり楽観的な期待に基づく見切り発車をしなそうなんだよな。まあ日光自身、一度他人の評価を決めたら、よほどの出来事がないとそれを翻さなさそうだし……。
そして、思考はそんななのに日光は情に篤い。ひとたび惚れたら好きじゃなくなるまでずっと好きでいることしかできなそう。誰かを守ってやって幸せにしたい願望も肉欲も強い。結婚前提でない交際に否定的な価値観をお持ちの可能性が高めなので、付き合うとしたらそれは必ず真剣交際だったはず……いやはや。欲望と理性の間でかなりバグってしまいそう。
長谷部♀にはこういう面倒くささはない。自分は相手にとってもったいないくらいの存在だ、と素で思っているし、そう思わせ続けてくれる相手とくっつくと思う。
長谷部♀は日光♀よりも責任転嫁ができるので、仮に気が強すぎてモテなくても「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」くらいで堂々として、そのうち「別に好きでもない相手にモテる必要は全くないな」と気づき、好きな相手と幸せになる。女性であれだけ態度が尊大ってことは、多分わりとハッピーな人生だったんだろうし、やろうと思えば多少はおしとやかにも振舞える(などと根拠もなく自負している)と思う。そういうところ憎めないよね……。
仮に長谷部♀のお相手のお母様が長谷部♀のこと気に食わなくてなんかイヤなことしてきたら、「貴様は未来の連れ合いと母親どっちをとるんだ?!」って迫って、もし「きみ」と即答しなかった場合は(なんだこのマザコンは?!)って秒で別れる。反省するとしたら自分の男を見る目のなさだけだと思う。宗三たちの前で飲んだくれて洗いざらい話して一月後には元気ですよ。
まあ、崇拝している上司の奥様が自分のこと嫌い、とかだと多少困るかもしれないけど、単に崇拝しているだけである以上はそのうちどうにかなる。
日光♀は日光♀で、相手のお母様が自分のこと嫌いっぽいってわかったらたぶん最終的には自分から別れるんだけど、このマザコンが!!とはならずにおそらく「好きだからこそ身を引く」的な形になるのでダメージがデカい。あの人たぶん普通よりマザコンに甘いよ多分。ママママ言ってるのは引くかもしれないが、親孝行な男性は高ポイントだと思う。
どうやったらいいんだろうな。最悪の場合は“Komm, Süsser Tod”みたいなことになる("can't live without the trust from those you love")のだがそれは避けたい。二人が愛し合っていればそれだけでいいような状況ならいけるのかな。
天涯孤独の寂しい男やもめとか、終生独身宣言をして周りを悩ませていた頑固者とかをうっかり好きになって、まさかあいつに連れ合いができるとはなんてありがたいんだ、これで我々もひと安心だ、と周囲に拝まれていれば、それなりに満足して死ぬまで幸せにやりそうな気はする。本当は日光♀にしたら理想的な女性だと周りに称えられて恋人が誇らしそうにしているのを見られるのが理想なんだろうが、それは舞台がスパルタ共和国でもないとなかなか難しい気がする……。まあなんにしても一文字は日光が幸せなら祝ってくれるだろうし、良いか。
そこまで状況を絞らなくても、日光とうまくやれるお姑さん、については普通にいると思うんだよな。日光が思っているよりは、世界の方がまだ寛容だと思う。
「娘とウィンドウショッピングするのが夢だったの♡」タイプはまずいと思いきや、ミーハーなママなら日光を見てタカラヅカの女優さんみたい!!となり、エスコートされて喜んでくれる可能性がある。あるいは、気弱でおとなしいお嬢さん育ちで、体調を崩しがちで子供をちょくちょく頼らざるを得ない人、とかも、面倒そうにみえて日光が仲良くやっていくには逆にいいかもしれない……あの人は相手がわかりやすく面倒であるほど輝く。
一般には、息子より息子の妻の味方をしてくれるような考えの若いお姑さんが素敵なお姑さんなのだろうが、あまりしっかりしてアップデートされた人だと、日光の良い嫁キャンペーンにドン引いてしまってうまくいかない気がする。
あるいは、女同士ならアリかもしれない(現代時空に限る)。女であっても、日光は「うちの娘が連れてきたんだし、この人ならまあ……」と先方を納得させる、女性の連れ合いとしてこの人なら良いかも、と思わせるオーラがある。相手がバイとか元々ノンケなら、男と付き合って幸せになったほうが……とか日光が言い出して揉めるかもしれないけど、根っからのビアンで周りも普通に良かったねモードであればそんなに気にしなそう。ビアンならまあ、言うても精子提供と覚悟さえあれば子どもも儲けられるし。
とにかく、社会から見て男役に立つのが異様に向いてる……。